[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
の上に寝かされ、その両腕を後ろ手に縛られていたからだ。
きっと気絶させられた後、城の地下牢に閉じ込められたのだろうと、おおよそは察することが出来た。
それはきっと、自分があの隠し部屋の娘を見てしまったから……。
「 ! 」
そう思うや否や、蘭丸は夢から醒めたようにカッと双眼を見開いた。
『 そうだ…!あの娘! 』https://www.easycorp.com.hk/blog/complete-guide-company-incorporation-in-hong-kong/
『 あの手足のない娘。あの者に素性を訊こうとしていた時に、ふいに背後から首を突かれて、そのまま意識を… 』
蘭丸の記憶が、段々と鮮明になりつつあった時
ギィィィィ…!!
上の方から扉を開く音が響き、地下牢へ続く石段を降りて来る、複数の足音が聞こえてきた。
「──あやつは?」
「──最奥の牢にございます」
足音が近付いて来ると共に、色の灯りが、蘭丸の居る牢の前へと迫ってくる。
やがて、を手にした牢番らしき男たちが姿を見せると、その間から、
険しい表情をした信長が現れて、牢の前へと静かに歩み寄って来た。
「……ぅ…上様…」
「何じゃ。気が付いておったのか」
「……」
「そちたちはもう良い。下がっておれ」
「はい、上様」
「この事、決して他言致さぬよう」
牢番らは深々と一礼すると、松明を側の柱の金具に挿し入れて、その場から去っていった。
牢の中の蘭丸は、首をもたげ、えたような目で信長を見つめている。
仔犬のように震える蘭丸に、信長はスッと鋭利な眼差しを向けると
「……まさかそなたが、この儂のいて、あの仏間へ入るとはのう」
失望めいた口調で呟いた。
「何故に左様な真似を致した? 儂の信頼を笠に着ての所業か?」
その問いかけに、蘭丸は必死の形相で、首を左右に振った。
「違いまする! …上様のご命令に背いて仏間に入りましたことは、詫びても詫びても許されぬ、の罪にございます。
されど天主から──あの娘御を見たのでございます。上様と御台様に面差しがそっくりな、あの娘御を」
「……」
「初めは曲者と思い、それを見過ごすことこそ不忠義な行いと考え、上様のご命令に背いて仏間へ入りました。
なれど、仏間の奥の隠し部屋にいたのは、曲者ではなく、見目麗しき姫君にございました。その姫君には、片方の手足がなく…」
「もう良い──!」
信長の怒声が、蘭丸の言葉を遮った。
「左様な話、二度と致すでない」
「……」
「蘭丸。そなたは、見てはならぬものを見たのじゃ」
腹の底をるような、重々しい語気で信長は告げた。
「故に、そなたをこのまま生かしておく訳には参らぬ」
「…上様…」
「明日、打ち首を申し付ける故、よう心しておけ」
信長からの死刑宣告に、蘭丸は一瞬 大きく目を見張った。
が、やおら双眼を伏せて、深く息を呑み込むと、れるように重々しく頷いた。
「……死罪は、既に覚悟致しておりました故、甘んじてお受けする所存にございます」
「左様か」
「…されど、これは某一人の罪。どうか、坊丸、力丸ら、弟たちには──」
「わかっておる。あの者らまでめはせぬ故、安堵致せ」
「…有り難う…存じます」
蘭丸が小さく頭を垂れると、信長は目で頷いた後
「さらばじゃ。蘭丸」
と素っ気なく告げ、を返した。
「今少しお待ち下さいませ!!」
すると、去ろうとする信長を、蘭丸は慌てて引き留めた。
「…どうか、最後に…最後にお教え下さいませ! あの者は…、あの姫君はいったいどなたなのです!?」
「…今帰ったぞ、濃」
「ご無事のお戻り、心より喜び申し上げます。此度の勝ち戦、殿におかれましては誠に──」
「一日じゃ!」
姫の口上を信長の溌剌とした声が遮った。
「僅か一日で、あの今川勢を駿河へ叩き戻してやったぞ! どうしゃ濃、今川など恐おうはないと言った儂の言葉は偽りではなかったであろう?」
「まあ─」
意気揚々と告げる夫の前で、姫は思わず含み笑いを漏らす。Notary Public Service in Hong Kong| Apostille Service
「でしたら殿、私が申し上げた言葉とて、偽りではなかったでしょう?」
「ん?」
「“父上様は一度お認めになられた者を裏切るような真似は致さぬ” ──この言葉通りになりましたでしょう?」
「おっ……ははは、確かにその通りじゃのう」
「今川勢との戦は殿の勝ち。殿との口論戦はお濃の勝ちにございますな」
濃姫が得意顔で言うと、信長はふっと鼻で笑った。
「左様なことにまで勝敗を付けたがるとは、さすがは蝮の娘。負けず嫌いよのう」
「はて、それはどうでしょう? 殿の正室故かも知れませぬぞ」
「また左様な憎まれ口をききおって」
「ふふふ、これは失礼を致しました」
濃姫はおざなりに頭を垂れると、打掛の袖から袱紗(ふくさ)を取り出して
「……殿、ほんにようご無事で戻られました」
信長の顔に付いた泥を拭き取りながら、真摯な面持ちで告げた。
「此度の勝利は、あなた様の御為に、その命を擲(なげう)ってまで闘い続けてくれた者たちの、血と涙の結晶にございますな」
「…お濃」
信長は妻の言わんとする事を察したのか、ふいに真面目顔になって「うむ」と頷く。
その刹那、信長は濃姫の背中に手を回すと、ぐいっと自分の方へ引き寄せた。
「と、殿、いったい何を !?」
驚いて、姫が双眼をぱちくりさせていると
「よう覚えておけ。これが戦の匂いじゃ」
「……」
「その場に立った者にしか分からぬ匂いだ。この中に何十、何百という人間の魂がある…。それを、よう心に刻み付けておけ」
信長の纏う厚い甲冑の奥から、多くの人々の血と汗。
硝煙、砂埃、そして鉄が焼けるような鼻をつく匂い──
そんな、到底女人には受け入れ難いであろう様々な異臭が漂ってくる。
しかし姫はそれを、香を聞くが如き神妙な面持ちで、心静かに知覚していた。
何も信長に言われたからではない。
ひとえに武将の妻として、我が夫が身を置く場所の、何万という家臣たち血を流し闘い合(お)うた場所の匂いを知っておきたかった。
いつかこの異臭の中に呑み込まれ、信長が二度と戻らない日が訪れるかも知れない。
最悪、髪の一筋も遺さぬままに…。
濃姫は覚悟の思いで、その受け入れ難きものを、懸命に受け止めようと努めているのだった。
翌日の二十六日。
信長からの鄭重な礼を受けた安藤盛就率いる斎藤家の軍勢は、翌二十七日、無事美濃へと帰国した。
稲葉山城に着くなり、盛就は直ぐさま道三の御前に参上すると
「信長殿におかれましては、この度の殿のお力添えにいたく感謝の意を示され、
“此度の勝利は両国の団結の力がもたらしたもの”と評されて、幾度となく頭を下げておられました」
信長の深い謝意を、笑顔満面で申し伝えた。
「団結の力か…。この儂が裏切りもせず、確りと那古屋城を守ってやった故勝てた戦じゃというに、
「これはいったい…」
「信勝殿──。回りくどい言い方はせず率直に申し上げる。
我ら大和守(清洲織田)家としても、あのうつけ者の家督継承については甚だ遺憾に思うておりまする」
信友の言葉に、信勝はスッと眉をしかめた。
「こちらの心は報春院殿、柴田殿ら重臣たちと同じ。一刻も早く信勝殿に弾正忠家を継いでいただき、織田一門を立派に纏め上げてもらいたいのです」
「そんな……困りまする、信友様までもが左様に仰せられてはっ」Complete Guide: Company Incorporation in Hong Kong
「何が困る事があるのです!? 兄弟の別など関係なく、より優れた方が家督を継ぐ。それがこの戦国の世の習いではございませぬか。
亡き信秀殿が最後まで廃嫡をお認めになられなんだ故、うつけと謗(そし)られる信長殿が奇跡的に家督を継がれましたが、
本来ならば信勝殿が嫡男の座を与えられ、父上の後を継がれていても可笑しくはなかったのですぞ!?」
「……そう申されましても、既に家督は兄上が継がれております故、わたしの出る幕では…」
「奪い取れば良いだけの話ではございませぬか」
信友はさも当たり前のように告げた。
「信長殿から当主の座を奪い、あなた様がその座に就く。これほど簡単な話が他にござろうか?」
「無茶を申されますな。わたしは兄上から当主の座を奪うつもりはございませぬ。第一、兄上とて納得なされますまい」
「納得?」
「左様です。我々が説得に当たったところで、あの兄上がそう易々と当主の座を手放すとは思えませぬ」
信勝が渋面を作りながら言うと、いきなり信友は堰を切ったように笑い出した。
「何を言い出すかと思えば、あのうつけ者を説得するなどと…。面白い冗談を申される」
笑い涙を指先で拭いながら、信友は悪鬼の如く微笑むと
「説得のような回りくどい真似は不要。ただひたすらに、信長殿を討つ事だけをお考え下さいませ」
そう平然と言い放った。
「兄上を…討つ!?」
「左様。それ以外に、確実に当主の座を奪う方法はござらぬ」
「な、なれど母上は、兄上の死を望んでなどおられませぬ!あくまでも兄上が自ら座を退くようにと」
「はっ、これだからおなごは甘い」
信友はすかさず立ち上がり、信勝の真っ正直へと座り直した。
「そのような情に惑わされておる故、いつまでたっても事が運ばぬのです!
信長殿は兄でも身内でもない。あなた様が討ち取るべき敵だとお思い召され」
「兄上を敵などと、そのような事…!」
「思いとうなくても、信長殿はいずれあなた様の敵となる日が来るのです。
報春院殿や重臣たちの反感が更に高まり、信長殿に謀反を疑われるような事態にでもなれば、逆にこちらが討たれるかも知れないのですぞ」
「馬鹿なっ、有り得ませぬ!」
「いえ、有り得る事なのです。信勝殿とてご覧になられたでしょう?信秀殿の葬儀の席における信長殿のお振る舞いを。
唯一自分を信じてくれていた父親の位牌に、あろうことか抹香を投げつけられたのじゃ。
信長殿という男が如何に愚かで、情の薄い人間か、あの一件でようくお分かりになられたはず」
信勝は思わず返す言葉を失った。
葬儀の席での信長の振る舞いは実に無礼極まりなく、品と秩序を重んじる信勝にとっては、正直理解し難い行いであった。
それ故、あの兄に一瞬失望を覚えたことも確かだった。
しかしだからと言って、それが信長討伐への思いに結び付くのかと訊かれれば、答えは否である。
そんな時
「お方様!お方様!どちらへおられまする!」
外の廊下から、老女・千代山の声が響いた。
濃姫は何事であろうか?と、怪訝な面持ちで外に出ると
「嗚呼!こちらでございましたか!」https://www.easycorp.com.hk/zh/notary
打掛の裾あしらいも構わずに、千代山が大慌てでやって来た。
「お方様…お急ぎ下され!表に輿をご用意致しました故、すぐにお支度を!」
「落ち着きなされ、千代山殿。いったい何の話をされているのです」
興奮状態の千代山は一度大きく深呼吸をすると、動揺の色が濃く浮かぶ顔を向けながら、一息に告げた。
「大殿様が、ご危篤(きとく)にございます!」
「義父上様が!?」
「暫く前からご体調が優れず、度々床に臥せられていた由」
「…何と…」
「お方様、一刻を争うことにございます。直ちにお支度をあそばされ、末森城へお出座し下さいませ!」
「このことを、殿には!?」
「先程 平手様がお知らせに参りましたが、野駆け中の殿が、早々に見付かるかどうか…」
千代山は不安顔で言うと
「とにもかくにも一大事でございます故、せめてお方様だけでも、急ぎ大殿様のもとへ!」
濃姫を化粧の間へと移動させ、大急ぎで身支度を整えさせた。
濃姫は信長よりも一足早く末森城に駆け付けたが、既に大殿・信秀は虫の息であった。
ひゅーひゅーと、すきま風が吹き込んでいるかのような、高く細い呼吸を懸命に繰り返している。
顔も紙のように青白く、濃姫が初めて対顔した時のような、生き生きとした、あの豪胆さはすっかり失われていた。
信秀の枕元には多くの医師たちが付き、そこから少し離れた所に土田御前と信勝。
寝所の次の間には、柴田権六ら主だった家臣たちが、一間を埋め尽くすように控えている。
濃姫も信勝の隣に端座し、目の前の緊迫した状況を、固唾を呑んで見守っていた。
「──流行り病を患っていたのです。もう暫く前から」
ふいに信勝が呟いた。
「流行り病を?」
濃姫が思わず聞き返すと、信勝は静かに頷いた。
「父上は“大した事ない”“平気じゃ平気じゃ”と、常に笑って言うておられましたが…
今思えば、父上はずっと、死にも繋がる病と、独りきりで闘っておられたのでしょうな」
「…左様にございましたか」
姫が得心して頷き返すと
「大殿がかような状態に陥ったのは、流行り病のせいではございませぬ」
信勝の説明を覆すように、突として土田御前が口を挟んだ。
「女狂いのせいじゃ。卑しい女共に、生気をみな吸い取られてしまわれた故に相違(そうい)ない」
「お止め下さい母上。このような時に何を申されるのです!?」
信勝は小声で母を窘(たしな)めた。
「だってそうではありませぬか。 “尾張の虎”と呼ばれ、表の世ではその武功を讃えられた大殿なれど、普段はどうであった?
殿御の甲斐性とばかりに、側室を幾人もお抱えになり、毎夜のように奥向きに通われておったではないか。
私からすれば、このような有り様になったのも自業自得。年甲斐もなく若い女ばかりにお手を付けられた故、精も根も尽き果ててしもうたのじゃ」
「母上、お言葉が過ぎまするぞっ」
信勝は今一度窘めたが、土田御前は構わないとばかりにそっぽを向いた。
確かに信秀には多くの側室がおり、信長や信勝も含め、分かっているだけでもニ十人以上の子供が存在する。
が、だからといって夫の死を目の前に、このような辛辣な言葉を漏らす母の心情が、正直信勝には理解出来なかった。
口入れ屋に入るとお客様を待っているのか、依子が一人座っていた。
ひゐろは依子に気がつかないふりをし、距離を取って座っていた。
麻布で彼女の姿を見かけ、男と抱き合うように歩いていたことは誰にも口外せず、黙っておこうと思った。
ところが、依子のほうがひゐろに近づいてきた。
「……初子さん、ちょっと来て」
依子は、ひゐろの手を引っ張り、口入れ屋の外に出た。https://www.easycorp.com.hk/blog/complete-guide-company-incorporation-in-hong-kong/
「先日、私のことを見かけたでしょ?あの日のことは、誰にも黙っておいて」「ええ。口外する相手もいませんし、話しませんよ」
そうひゐろが答えると、依子はお客様のところへ駆けて行った。
麻布でいっしょにいた男は、人に言えない関係なのだろうかとひゐろは思った。
口入れ屋に戻ると事務員が
「今日のお客さんはすでに外で待っているので、所定の場所に行ってくれ」
と言う。
ひゐろが向かうと、そこに二十代と思われる若い男が立っていた。
「はじめまして。寿司屋を営んでいる者です。最近、暑いね。水浴びでもしたい気分だよ。本日は、よろしくお願いします」
「今朝、兄も同じようなことを言っていました。海水浴に行きたいって」
「朝刊を読んだら、今月に入って東京市の海で泳いでいる人が四十名も亡くなったって。去年の倍近くの人が、亡くなっているらしい」
「そんなにたくさんの方が!確か、不景気で自殺する人も多いと聞きました」
「……そうか。気持ちはわからないでもないな」
その言葉に、ひゐろは驚く。
「……何かあったのですか?」
「まぁ、後で話そう。とりあえず、行き先はどこが良いかな?」
「特に希望はないので、お任せします」
「それじゃ、国技館まで行ってみようか。俺は相撲が好きなので」「はい、結構です。よろしくお願いします」
ひゐろと寿司屋の男は、両国へ向けて出発した。
日本橋を抜けた頃、寿司屋の男は話しはじめた。
「この不景気で、うちの寿司屋もお客さんがずいぶん減ってね。その上、最近奥さんの秘密が発覚したのさ」
「……秘密?差し支えがなければ、どのようなことですか?」
「うちの奥さんが俺と結婚する前に、他の男と結婚していたんだよ。それを俺に黙って、を挙げた」
「それは、衝撃的な出来事ですね。ただ奥様も『初婚ではないの』とずっと言えなかったんでしょうね」
「結婚して六年経って、初めて自白したんだ。まぁ、うすうす感じていたんだよ。それで夜の営みの中、聞いてしまった」
「……直接、訊ねたのですか!」
「あぁ。『お前、俺以外の男を知っているな』って。最初はずっと否定していたんだけど、隠せなくなったんだろう。先週、自白した」
「もし結婚していたことを知っていたら、奥さんと結婚していなかったですか?」
「結婚しなかったかもしれないな」
「そういうことを言われるのが怖くて、奥さんもずっと隠していたんでしょう」
車は、人形町を抜けていく。「結婚していたことを隠していたからといって、離婚するつもりはないのでしょう?」
「……離婚したい気持ちには、なっている」
「……えっ!」
「でも、離婚できないだろうな。だからこそ、苦しい」
「そうですよね。今は苦しいかもしれませんが、きっと時間が解決してくれますよ」
ひゐろは結婚した経験もないのに、少し生意気なことを言ったなと思う。
魚屋の男の話を聞いて、ひゐろは夫婦や恋人の間柄に嘘は禁物だと感じた。
孟さんには誠実でありたいとひゐろは思った。
「もうすぐ国技館が見えてくる。昨年、再建したばかりだから、きれいだよ」
魚屋の男は、そう言った。
国技館が近くなると、を結った大きな男たちの姿が見えた。
「きっとあの方々は、お相撲さんね」
歩いているお相撲さんの横を通り抜けると、数分もしないうちに国技館へ着いた。
「あそこで、ラムネを売っているみたい!せっかくだから、買いましょうよ」
ひゐろは、寿司屋の男に呼びかけた。
「よし。俺がおごるよ」
販売員にラムネの栓を開けてもらい、ひゐろと魚屋の男はラムネを飲んだ。
「ラムネは、爽やかですね」