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そこへ幕府側への大打撃となったのが、将軍である徳川家茂が病により逝去したことである。
いよいよ長州征伐どころではなくなり、まさかの長州の勝利という形で終局を迎えた。
無論、この結果は新撰組にも衝撃をもたらす。局長室には近藤、土方、伊東の三名が膝を突き合わせていた。
「よもや、幕府が負けるとは……。健康新女性︳女子經痛11年 月經沒來就便秘 揭患子宮內膜異位症︳附醫生拆解 - 晴報 - 健康 - 女性疾病 - D221208 思いも、せなんだ」
近藤は目を見開き、やっとの思いで言葉を絞り出す。江戸──将軍のお膝元で育ってきた、近藤や土方にとって、幕府の権威というのは絶対的なものだった。
それに綻びが出たという事実はまるで夢物語であり、到底受け入れられるものではない。
「聞きゃあ、負けると分かった途端に兵を引いた腰抜け共が大量に居たという話しじゃねえか。今まで散々甘い汁を吸わせて貰っていたと言うのによ、情けねえ話しだぜ」
土方は忌々しげに整った顔を歪めた。これが新撰組なら腹を切らせていたところである。
「窮鼠猫を噛む……といったところでしょうか。薩摩が出陣しなかったあたりも気になります」
伊東の言葉に、土方は眉を顰めた。薩摩は本来、長州の拠点である萩を攻める手筈だったという。もしそれが成せていたら戦況は変わっていた筈だった。
「あの薩摩芋が……」
「薩摩へ探りを入れる必要も出てくるな」
それを聞いた伊東は口元に当てた扇子の裏に笑みを浮かべる。
「局長。……僭越ながらこの伊東、少々伝手がありますので。当たってみます」
「おお、そうか。流石は伊東さんだ」
それを聞いた伊東は立ち上がった。部屋を出ていこうとするが、その背へ土方が口を開く。
「伊東さんよ」
「はい」
「……俺ァお前さんを、信じて……良いんだな?」
その問い掛けを背で受けた伊東は、少し目を開くと直ぐに伏せた。
「……はい。勿論ですとも」
以降、伊東は情報収集という名目にかこつけて、ますます隊から離れて行動するようになる。 やがて夏の茹だるような暑さに、秋の涼しさが混じる頃。隊内にも遅れて報が伝わり、事実上幕府が負けたという衝撃が走る。故に連日その話で持ち切りだった。
久々の非番である桜司郎、馬越、山野は屯所の直ぐ近くにある茶屋へ甘味を食べにやってきていた。そこでも例に漏れず、長州征伐についての話が繰り広げられている。
「ま、まさか長州が幕府に勝つとは誰も思いませんよね。敗因は何だったのでしょう……」を静かに啜りながら、馬越が呟いた。それを聞いた山野は顎を掻きつつ眉を顰める。
「俺が思うに、士気の差じゃねえのかな。なんたって、無理矢理行かされた藩も多かったんだろう?そりゃやる気も出ないって訳さ」
「武器の差……って話しもありますよね」
「武器って……。長州は貿易を禁じられていたんだろう?どうやって手に入れたって言うんだ」
二人の話しを隣で聞きながら、桜司郎はぼんやりと通りを眺めた。赤とんぼが目の前を横切り、落ち葉が柔らかな風に吹かれて転がる。
その脳裏には、昨年の冬に聞いた高杉の言葉が浮かんでいた。時が経つのは早いもので、もう直に一年が経つ。
『長州は、絶対に負けんよ。君が好きな世はこれから崩れていく。……僕がそうさせるからじゃ。僕らを足蹴にした幕府には、相応の報いを受けさせる』
──高杉さん、ついにやってのけたんだ。