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上座に座り怒り狂う乃美とその隣で呆れ返る桂。
正面でこちらも呆れ返る伊藤と胡座を掻いて拗ねた子供の様な顔をした高杉を確認した。
「お茶お持ちしました。」
静かに中に入ってまず乃美の傍に寄ってどうぞとお茶を勧めた。
「脱藩してまで来る必要ないだろ。せめて何かの任務を預かって来いよ……。」
「だーかーら!俺はこの目で情勢を見たい!それが今後の長州にも役立つ!悪かないやろ。
それに脱藩なんざ松陰先生だってしちょる。」 https://www.easycorp.com.hk/zh/notary
桂の言葉に声を張り上げ胡座に頬杖をついてふんっと顔を反らした。
「このガキ一回斬って脳みそ入れ替えちゃろか!」
乃美の言葉に三津は真っ青になって震え上がった。「やだ!乃美さんがそんなんするの見たくない!やだ!」
三津はふるふると頭を振って乃美の左腕に縋りついた。
「おぉ……すまん……あまりにも腹が立ってうっかり言っただけやけぇ。」
大丈夫大丈夫と目を潤ます三津の頭を優しく撫でた。
『三津さん連れて来て正解だった……。』
伊藤は心臓に悪いと胸に手を当てた。
「三津,真に受けなくていいからそっちに座ってなさい。」
乃美に密着してるのが腹立たしい。胸が当たってるんじゃないか?と片眉が釣り上がる。
桂の声が冷たく感じて三津はしょんぼりした顔で乃美に失礼を詫て,湯呑みを配ると部屋の隅っこにちんまり座った。
乃美はちらちらとしょげた三津に目を向ける。
「とにかく……。来てしまったものは仕方ない……。今日は滞在を許すが早急に長州に帰れ!分かったか!」
これ以上三津を怯えさすのもしのびないから乃美はそう言うに止めた。
「へいへい……。」
目も合わさずふてぶてしく返答した。言う通りにする気なんてさらさら無い。
「晋作……留守を預かる者が家を留守にしてどうする……。考えたら分かるだろ。」
諭すように語る桂の声も知らんぷり。
『ホンマにおっきい子供。』
その様子を見つめていたら不意に目が合った。
「そんなに帰って欲しけりゃ帰ってやるわ。」
高杉が急にすくっと立ち上がり障子に向かって歩き出したが,
「土産にこの娘貰ってくからな!」
「え!?」
三津の腕を掴んで無理矢理立ち上がらせて半ば引きずるように部屋を飛び出した。
「待て晋作!それは断じて許さん!」
血相を変えた桂もすぐさま部屋を飛び出した。
桂が追ってきたのを確認した高杉は近道じゃと足袋のまま縁側から外に飛び出し,引きずられる三津もそのまま縁側から落ちた。
「……騒々しいと思ったらまさか人攫いが紛れ込んでるとは。」
「馴れ馴れしいにも程があるな。」
「三津さんに怪我でもさせたらどうなるか思い知らせないと。」
高杉の行く手を阻むように三つの壁が立ちはだかる。
「稔麿!九一!玄瑞じゃねぇか!」
久しぶりの再会に無邪気な笑顔の高杉だが吉田は不敵な笑みで大刀の柄に手をかけた。
そしてゆっくり刃が姿を見せるのを見た高杉は慌てて足を止めた。「おいおい久しぶりに会ってそりゃないやろ稔麿!」
「じゃあ三津離してこっちに寄越せ。お前がそうして触ってんのが腹立つわ。」
三津は人質だ。やなこったと悪態をつく。
背後には桂と乃美に伊藤も追いついて囲まれてしまい逃げ道はない。
「刀抜いてみろ。こいつ盾にすっからな!」
ぐっと三津を引き寄せて前後に視線をやった。
「ちょっと会わないうちに男として落ちぶれたな晋作。」
入江は呆れて盛大な溜息をついた。
高杉に引き寄せられた三津はじーっとその顔を見つめた。
「ん?何や。」
それに気付いて視線を落とすと,三津はぐっと背伸びをして高杉との間を詰めた。
何をする気だ?と誰もが三津の行動に釘付けになった瞬間。
「アカンでしょ!」